日本は“地震大国”と呼ばれる地震が発生しやすい国であるため、住宅を建てるときは耐震性を高め、基準をクリアする必要があります。東日本大震災や熊本地震をはじめとした、大規模な地震が発生することも。とくに「木造住宅は地震に耐えられるのか?」という不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、木造住宅の耐震性や建築基準法における新耐震基準、耐震・免震・制震の違い、地震に強い住宅の特徴などについて解説します。
1.木造住宅の耐震性について
木は鉄より柔らかいイメージがあるため、一般的に木造より鉄骨造・鉄筋コンクリート造の住宅のほうが耐震性に優れていると思われています。しかし、木には本来のしなやかさがあり、地震の揺れを逃がしやすいという特性があるのです。
また、揺れの大きさと住宅の重量は比例します。木造住宅は鉄より軽い木を用いているため、建物の大きさが同じであれば、当然ながら鉄骨造や鉄筋コンクリート造の住宅より軽量です。つまり、木造住宅は揺れ自体が小さくて済むので、決して地震に弱いということはありません。
木造住宅の耐震性を高める場合、押さえるべきポイントは材料より工法です。木造住宅の工法はいろいろありますが、耐震性を重視するなら建物を揺らして力を逃がす「在来工法」か、もしくは面で受け止めて揺れを抑える「ツーバイフォー工法」が推奨されます。
木造住宅でも適切に構造計算を行ないながら設計すれば、木のぬくもりを活かしつつ、地震に強い住宅を建てることができるでしょう。
2.震度7の地震にも耐えられる?建築基準法における新耐震基準について
住宅の耐震性を考えるにあたって、ぜひ覚えておいてほしいのが「新耐震基準」です。
1981年6月、建築基準法が改正されるとともに新耐震基準が制定されました。「震度5強程度の中規模地震で軽微な損傷、震度6〜7に達する程度の大規模地震でも倒壊は免れる」という耐震基準が義務付けられ、より地震の揺れに強い、壊れにくい堅固な住宅が建てられるようになったのです。
そして、2000年6月には「2000年基準」と呼ばれる、さらに厳しい耐震基準が設けられることとなりました。この2000年基準の改正内容は、1995年1月に発生した阪神淡路大震災に基づいており、以下に関する規定が厳格化されています。
- 地盤調査の規定
- 地耐力に応じた基礎構造の設計
- 耐震壁の配置バランス
- 筋かい金物使用や柱頭柱脚接合金物使用
耐震基準が制定された後の新築住宅なら、損傷はするものの倒壊は免れる構造であるといえます。
3.耐震性能の最高ランクは耐震等級3
耐震性に関する知識として、もう1つ覚えておいて欲しいものが「耐震等級」です。
耐震等級とは、住宅性能表示制度と耐震診断に基づく耐震性の“指標”です。もっとシンプルな言葉で説明すれば、その建物が地震にどれだけ耐えられるかを数値で示したものです。耐震等級は3段階で設定されており、 以下の3つの観点から診断されています。
- 構造躯体の倒壊等防止
- 構造躯体の損傷防止
- その他
建築基準法で定められた耐震基準を満たせば等級1、その1.25倍に達していれば等級2、1.5倍まで達していれば等級3です。「長期優良住宅」の認定を受けるためには、耐震等級2以上で建てる必要があります。
災害避難場所となる学校、病院や警察といった公共施設についても、同じく耐震等級2以上で建てなければなりません。なお、災害時の拠点となる消防署や警察署の多くは、最高ランクの耐震等級3で建てられています。
耐震等級に応じて地震保険料の割引を受けられるため、それも踏まえながら耐震性の高い住宅を建てましょう。
4.耐震・制震・免震の違いとメリット
地震に強い住宅を建てる場合、耐震に加えて制震・免震という技術があります。それぞれ考え方やアプローチは異なりますが、どれもよく似た言葉なので混同されがちです。そこで、耐震・制震・免震の違いとメリットについて解説します。
4-1.耐震
耐震とは、建物自体を頑丈にして地震に耐えるという技術です。強度の高い材料をたくさん使う、壁・柱・梁などを一体化するといったアプローチを実施します。住宅に耐震構造が組み込まれていることで、後述する制震・免震の効果もしっかりと発揮される地震対策における基本中の基本です。
耐震構造は地震の揺れが直接伝わるため、揺れ自体は感じやすいですが、建物自体は倒壊しないだけの強度を持っています。また、現在の建築基準法に沿って建てられている住宅のほとんどは、最初から耐震構造が採用されているため、コストを抑えた対策もできます。
最高ランクの耐震等級3にもなれば、大震災レベルの強い地震が来ても耐えられるでしょう。
4-2.制震
制震とは、地震の揺れを吸収して建物を守るという技術です。地震が来ると建物だけではなく、床や壁に組み込まれた制震装置も一緒に変形するので、結果として揺れのエネルギーを受け流すことができます。
1階には直接揺れが伝わりますが、2階以上なら揺れを大幅に低減できるため、食器棚やタンスといった家具が倒れたり、転倒によって怪我をしたりするリスクを抑えることが可能です。2階建て・3階建ての住宅を検討しているなら、制震構造を採用して建てることをおすすめします。また、制震装置が揺れを吸収してくれるので、建物の変形・劣化を抑えられることもメリットです。
耐震よりコストはかかりますが、それを踏まえても制震装置を実装する価値は高いといえるでしょう。
4-3.免震
免震とは、地震の揺れが伝わらないようにして建物を守るという技術です。建物と地面の間にダンパーや支承といった免震装置を入れて、建物を地面から切り離すというアプローチを行ないます。主に高層ビルや大型マンションなど大規模な建築物を建てる際に採用されることが多い方法です。
免震構造を採用した場合、地面の揺れが建物へと伝わる前に吸収されるので、1階でも2階以上でもほとんど揺れを感じなくなります。さらに、建物に対するダメージも小さくなるため、変形・劣化を防ぐという観点から考えても非常に有効です。
耐震・制震と比べても揺れが大きく低減されるので、地震対策としての効果は優れていますが、その分コストもかなり高くなっています。また、地盤の制約を受けやすい、台風で揺れやすいといったデメリットがあることも覚えておきましょう。
5.耐震と免震・制震を組み合わせるとより強固な躯体に
建物の地震対策における技術は、大きく分けて耐震・制震・免震の3種類があります。どれも優れた技術ですが、3つのうちどれを選ぶべきというより、組み合わせることを検討したほうが効果的です。地震対策の基本は耐震なので、耐震+制震もしくは耐震+免震という組み合わせで考えましょう。
三菱地所ホームでは、標準装備として最高ランクの耐震等級3に対応(※)しています。独自開発の高耐力壁「ハイプロテクトウォール」や、耐震性とともに空間自由度を高めた「ツーバイネクスト構法」によって、安全かつ快適な暮らしを実現することが可能です。耐震等級3で基本部分をしっかり固めたうえで、必要に応じて制震装置や免震装置を取り入れられるので、より強力な地震対策を施すことができます。
冒頭でも述べているように地震大国の日本では、地震は何度も発生するでしょう。建物の負担を大きく軽減できるようにすれば、本震はもちろん繰り返す余震にも耐えられるため、何ものにも代えがたい“安心感”を得られるでしょう。
商品および条件によって異なります。
6.耐震性の高い住宅で安心感のある暮らしを
日本に住んでいる以上、地震は避けて通れない問題です。防災知識を身につけたり、防災グッズを準備したりすることも必要ですが、いざ地震が来ると思うように行動できないことも。安心感のある暮らしを実現したいなら、まずは耐震性の高い住宅を建てることが大切です。 耐震、制震、免震のどれを取り入れると効果的かという点は、計画している建物の規模によっても違います。安心を求めるあまり、オーバースペック・割高な対策をとることになってしまうとせっかくの家づくりが楽しめなくなる可能性も。迷ったときはプロに相談してみましょう。
三菱地所ホームでは、地震に強い注文住宅を多数取り扱ってきたノウハウがあります。耐震性を高める方法や制震・免震の技術について詳しく知りたい人は、ぜひ資料をご請求ください。