家づくりについて調べていると、「ツーバイフォー工法」という言葉をよく見かけます。しかし、建築に馴染みがなく、どのような工法なのかいまいちピンとこないという人も多いのではないでしょうか。
この記事ではツーバイフォー工法とは何か、メリットとデメリットをわかりやすく解説します。家づくりの参考にしてください。
1.ツーバイフォー工法とは
ツーバイフォー工法は、建築基準法上では「枠組壁工法」といいます。名前が示す通り、床と壁を「面」として建物を支える構造のことです。壁・床・天井の6つの「ダイアフラム」というパネルで囲い、壁と床を金具や金物で固定していきます。
2インチ×4インチの木材で作った構造用枠組材と構造用面材を一体化させたパネルで構成されていることが「ツーバイフォー」という名前の由来です。なお、使用する部位によって、2インチ×6インチなど、別の規格材を使うこともあります。
1-1.木造軸組工法との違い
ツーバイフォー工法とよく比較されるのが、木造軸組工法です。木造軸組工法は在来工法とも呼ばれ、日本で昔から使われている工法です。基礎に土台を乗せ、木の柱、梁、筋交いで建物を組んで支えます。
面で建物を支えないため、間取りの自由度が高い点がツーバイフォー工法と比べて優れている点です。しかし、技術が求められるため、職人の質に仕上がりが左右される可能性があります。ツーバイフォー工法の場合は、材料が規格化されており、職人の技術の影響を受けにくいのが特徴です。
ツーバイフォー工法は木造軸組工法より耐震性でも優れているといわれています。ただし、近年、木造軸組工法の耐震性も向上しており、一概に優れているとはいいきれません。
1-2.鉄骨造との違い
鉄骨造とは、鉄骨を構造材として使う建築工法です。角形鋼管や梁としてH型鋼を使い、鉄骨ラーメン構造という工法で作られています。
鉄骨造は鉄骨を使うため、強度が高い点がメリットです。そのため、他の工法と比べると、大きな窓を使った開放的な空間が作りやすいのが特徴です。しかしその分、特に重量鉄骨造は、ツーバイフォー工法と比べてコストが高くなる傾向にあります。
ツーバイフォー工法は、鉄骨構造と比べると耐火性が高い点が特徴です。木は鉄よりも燃えやすいと思われがちですが、ある程度大きな断面を持つ木であれば、表面が炭化することで燃えにくくなり、高い耐火性を有しています。
2.ツーバイフォー住宅で家を建てる8つのメリット
ツーバイフォー工法は面でバランスよく建物を支えるため、地震や風など外部からの力を分散させて、変形や崩壊を防ぎます。気密性、耐火性、省エネルギー性、遮音性が高い点も特長です。
ツーバイフォー工法で家を建てることで、どのようなメリットがあるのか、8つのポイントごとに解説します。
2-1.地震による倒壊を防ぐ【耐震性】
ツーバイフォー工法は建物を床・壁・天井の六面で支えるため、地震の揺れを建物全体でバランスよく受け止め、揺れにくいのが特長です。
過去の阪神淡路大震災、新潟中越地震、東日本大震災でも、ツーバイフォー工法の家は他の木造家屋と比較して、半壊や倒壊を免れているという実績があります。耐震性の高さは、地震の多い日本では特に重要なメリットといえるでしょう。
2-2.台風や強風に強い【耐風性】
ツーバイフォー工法は台風や強風にも強い工法です。もともとハリケーンが多いアメリカで生まれた工法であるため、外からの力に強く、強風対策をしっかりと行なっています。
強風対策の例として挙げられるのが、ツーバイフォー工法の家で用いられるハリケーンタイと呼ばれるあおり止めの金物です。ハリケーンタイで壁と屋根をしっかりと連結させているため、台風で屋根が飛ばないようになっています。
雪が多い土地の雪庇対策としても有効であり、近年ではツーバイフォー以外の住宅でもハリケーンタイを使う場合があります。
2-3.火の燃え広がりを防止する【耐火性】
ツーバイフォー工法は木を構造材にしていますが、耐火性にも優れています。
前述のように、大きな断面を持つツーバイフォー工法の木材は、火災時にも表面のみが炭化して、内部まで火が届きにくくなります。さらに、通常では火の通り道となってしまう床や壁において、枠組材などがファイヤーストップ材の役目を果たします。
このファイヤーストップ構造は、「外部からの火で燃えない」「火災が起きても一定時間他の部屋に広がらない」「部屋から火が広がっても延焼を遅らせる」という3つの基準を満たしています。
ツーバイフォー工法の建物はほとんどが特別な対策をしなくても、ファイヤーストップ構造により「省令準耐火構造」を満たせる点が特長です。鉄筋コンクリート造と同等の耐火性能があると認められているので、火災保険料が一般木造より安くなります。
2-4.夏涼しく冬暖かい【省エネルギー性】
ツーバイフォー工法は気密性と断熱性が高いため、夏涼しく、冬暖かい作りになっています。気密性とは部屋の空気を外に逃さない性質、断熱性とは外の暑さや寒さを中に伝えない性質です。
このため、冷暖房効率が高く、部屋をすぐに快適な温度に整え、保ってくれます。省エネルギーで部屋の温度を調整できるため、光熱費を削減できる点もメリットです。
2-5.静かで快適な暮らしを作る【遮音性】
ツーバイフォー工法は遮音性が高く、静かな暮らしができます。遮音性とは音を遮る性質です。
ツーバイフォー工法は気密性が高く、外壁面は石膏ボード、構造用面材、断熱材、外壁材など多重構造になっています。音は空気から伝わるため、気密性が高いほど、音が外に漏れにくくなります。さらに壁が音を吸収するため、多層の壁があることで、家の内外に音が漏れにくくなるのです。
2-6.長寿な家を実現する【耐久性】
ツーバイフォーの家は長持ちで、高い耐久性を持っています。耐久性を実現しているのは、結露のしにくさや、構造材の質によるものです。
ツーバイフォーの住宅は断熱性が高く、家の結露を抑えてくれます。結露は外と中の温度差によって発生しますが、断熱性が高いと、その温度差を緩和することができます。
また、ツーバイフォー工法ではほとんどの構造用製材に含水率19%以下のJASに基づく乾燥材が使用されます。湿気と結露の対策を万全に行うことで、耐久性が高められています。
2-7.小屋裏を有効活用できる
ツーバイフォー工法は屋根裏の構造がシンプルであり、屋根裏のスペースが活用できます。たとえば、屋根勾配を急にして2階の天井高を高くする、小屋裏空間を収納スペースとして利用するなど、アイデア次第で活用方法が広がります。
他の工法のように、建物の制約上できない、または小屋裏ができても狭くなるなどの問題が発生し、十分に活用できないということが防げます。
2-8.工期が比較的短い
ツーバイフォー工法は、工場で組んだパネルを現場で固定していきます。作業がシステム化され、効率的に進められるために、工期が比較的短くて済むというメリットがあります。
木造軸組工法の場合、柱と梁を1本1本組んでいく必要があり、手間がかかってしまう場合があります。工場でパネルを作るため、工期が短期間でも品質が安定しやすいのが特長です。
3.ツーバイフォー住宅のデメリット
多くのメリットがあるツーバイフォー工法ですが、デメリットと考えられる点もあります。後悔しないよう、デメリットについても押さえておきましょう。
3-1.構造にコストがかかる
在来工法などの場合、構造は目に見えない部分のため、建築基準法の範囲内であれば、材料を変更するなどしてコストを削減できる場合があります。しかし、ツーバイフォー工法は使用する構造材の規格が固定されているため、構造面でコストを抑えることはできません。
しかしその分、耐震性などの質が確保されており、安心できる構造であるともいえます。構造は家の基盤となる部分ですので、よく検討して選ぶ必要があります。
3-2.自由度がやや低い
ツーバイフォー工法は壁で建物を支えるため、間取りの自由度がやや低いといえます。たとえば、壁をなくして部屋一面の大きな窓を作ることは難しいです。
室内の壁もそれぞれ建物を支える役目を持っているため、リフォーム時に間取りを変更したくても、壁を壊せない場合があります。ただし、もちろん建築基準法の範囲内であれば、ツーバイフォー工法の住宅でもリフォームすることは可能です。
4.自由度をプラスした「ツーバイネクスト構法」
新宿ホームギャラリーの広々としたリビング
三菱地所ホームでは、一般的なツーバイフォー工法よりも間取りの自由度を高めた独自開発の「ツーバイネクスト構法」を取り入れています。
ツーバイネクスト構法では、ツーバイフォー工法の外壁の強度を50%高める、高耐力壁「ハイプロテクトウォール」を採用。さらに床の強度を高める「I形ジョイスト」を採用することで、関東大震災や阪神淡路大震災クラスでも全壊半壊なしの高い耐久力を実現しています。
また、一般的には3階建て以上の建物に対して行う構造計算を全棟で実施。耐震等級3※の最高ランクを確保しながら、大きな窓を取り入れた間取りや、仕切り壁の少ない開放的な空間を叶えられます。
建築条件や計画により等級が異なる場合があります。
5.ツーバイフォー工法の特徴を知り、納得できる家づくりを
家の構造は目に見えないものですが、住まいづくりの重要な要素です。日本で多く使われているツーバイフォー工法の特長を理解することで、後悔しない家づくりができるでしょう。
ツーバイフォー工法や構造について、興味がある方はぜひ一度三菱地所ホームギャラリーまでご相談ください。