昨今さまざまな分野でSDGsが注目されています。これは建築業界も例外ではなく、建築分野でどのような取り組みをしていくべきか、建築業界としても重要な課題です。
そこで本記事では、SDGsにおいて建築業界の取り組みをはじめ、建築物の工夫で貢献できること、木造・木質化の建築物の実例を紹介します。
1.持続可能な開発目標『SDGs』とは
SDGsは、「Sustainable Development Goals」の頭文字を取ったもので、「持続可能な開発目標」を意味します。
17の大目標と169のターゲットで構成されており、これらのターゲット全てを取り残さずに開発を進めていくという「leave no one behind」を誓っています。いわゆる発展途上国だけではなく、先進国でも積極的に取り組むべき課題として、定められています。
2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月に国連サミットでSDGsは策定されました。2016年から2030年までの期間で一定の水準まで達成するべく、具体的な目標が、国連加盟国193カ国に対して設定されています。
2.SDGsにおいて建築業界が目指す取り組み
SDGsには、17の目標が設定されており、さまざまな分野での目標が設定されていますが、建築物を建てるプロセスで、建築業界と密接に関わる取り組みもいくつかあります。どのような取り組みがあるのかについて解説します。
2-1.「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
7番目の目標である、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」とは、誰もが低価格で信頼性が高いエネルギーが利用できる状態を確保することです。
建築業でいえば、太陽光パネルや省エネ機器を自社サービスに導入し、積極的に設置することが該当します。また、自社で直接太陽光パネルを設置することや環境問題に取り組むことも含まれるでしょう。
2-2.「11.住み続けられるまちづくりを」
11番目の目標である「11.住み続けられるまちづくりを」とは、人間の居住地全体に対して安全かつ強いまちづくりを行い、そして持続的に続けられる状態にすることです。
これは、行政サービスや誰もがまちづくりに関われるなどのソフト面での目標を含みますが、ハード面では住宅建築や交通網の整備など、建築分野と深く関わっています。住宅建築で特に関わるものとしては、災害に強い住宅や省エネルギー住宅の建設が挙げられるでしょう。
三菱地所ホームでは標準仕様でも地震に強い家づくりを提案しており、耐震・免震システムや防災アイテムのパッケージ提案まで取りそろえており、災害に強い住宅や省エネルギー住宅の建築を提案しています。
2-3.「12.つくる責任 つかう責任」
12番目の目標「つくる責任 つかう責任」とは、持続可能な消費と生産を維持できるよう、生産のパターンを確保することです。
建築分野でいえば、長期間住み続けられる住まいづくりや、リノベーション(既存の建物を改修し、新たな機能を持たせること)やコンバージョン(建物の用途を変更し、再利用すること)への対応が当てはまります。
古民家再生もこの目標に向けての取り組みの1つです。
2-4.「13.気候変動に具体的な対策を」
13番目の目標「気候変動に具体的な対策を」とは、気候変動やその影響を抑えられるよう、緊急対策を講じることです。
建築分野でいえば、災害対策に向けての技術向上や、CO2排出量削減への取り組み、よりCO2排出量が少ない木造住宅の建築を目指すための取り組みが挙げられます。
三菱地所ホームでは、2050年までにCO2排出量ゼロを意味するネットゼロの達成を目指し、CO2排出量削減戦略を立てています。
2-5.「15.陸の豊かさを守ろう」
15番目の目標「陸の豊かさを守ろう」とは、森林の持続可能な管理です。過剰な森林伐採により、絶滅の危機に瀕している生物は多く存在します。
そのような生態系を壊さず維持するために、あらゆる種類の森林において、持続可能な管理を求め、衰えた森林については回復させることで、世界全体での森林の数を増やすことが大切です。
そのためには、過剰な伐採を回避することも大切ですが、木材となる資源を適切に使い、循環させることも重要です。適切な範囲で木造建築を建てることは、「伐って、使って、植える」という健全なサイクルの維持に役立ちます。
3.注文住宅も木造化へ。暮らす人にとってもメリットが大きい
日本では木造住宅が多く、いわゆるオーダーメイドの注文住宅に関しても同様のことがいえます。木造住宅は調湿性や通気性がよく、高温多湿な日本の風土に合っているためです。
木材は他の材料と比較して、熱伝導率が低く、断熱性に優れています。熱伝導率とは、熱の伝わりやすさを示す指標です。この数字が小さいほど、熱が伝わりにくいことを示します。
一般的に住宅の躯体として採用されているコンクリートや鉄と比べると、熱伝導率はスギやヒノキの場合で約0.09程度、コンクリートで1、鉄の場合は84とかなり大きな違いとなっています。
以上の点から木造化をすすめることは企業目線でのメリットだけではなく、その場所で過ごす人や暮らす人にとっても快適な建物になるという点が特徴です。
4.SDGsの取り組みの1つ【木造化建築の設計実例】
SDGsの取り組みの1つとして、木造化建築は注目されていますが、実際にどのような実例があるのでしょうか。ここでは、木造住宅や木造のオフィスの実例を紹介します。
4-1.木の葉が舞い上がっていくようなCLTのパビリオン
CLTとはCross Laminated Timber(直交集成板)の略称で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質構造材です。厚みのある大きな板であり、建築の構造材の他、土木用材、家具などにも使用されています。
CLT PARK HARUMIは、CLTを使い、隈研吾氏によるデザインで建築された、木造のパビリオンです。岡山県真庭市産材のヒノキを材料として構築されたCLTの板材と鉄骨を組み合わせ、木の葉が舞い上がるようなイメージで設計されています。
CLT PARK HARUMIは、現在では岡山県真庭市にある国立公園蒜山に移築され、観光施設や芸術文化の発信拠点として利用されています。
4-2.木造の枠を超えた圧倒的な自由度
駒沢ステージ1ホームギャラリーは、独自の「Flat Mass Timber構法」により、木造住宅でありながら、開放的かつ自由度の高い住空間を実現した住宅です。
木造の注文住宅は、環境面ではさまざまなメリットがあるものの、躯体としての強度は鉄骨と比較して劣る部分があり、開放的な空間が作りにくいという制約がありました。
駒沢ステージ1ホームギャラリーでは、木造でありながら、広々としたファミリーリビングダイニングやシームレスにつながるエントランスホールなど、家全体が開放的になるようデザインされています。
5.木造建築を通してSDGsに貢献しよう
SDGsは世界規模でトレンドとなっており、建築分野では建物の木造化による環境負荷の低減に注目が集まっています。
三菱地所ホームでは、木の魅力を最大限生かした、完全自由設計を行っており、環境に配慮した取り組みをしつつ、理想的な建築を実現可能です。
注文住宅だけではなく、オフィスや店舗を木造で建築することをご検討の方はぜひお問い合わせください。