新築住宅を購入するにあたって、よく耳にする言葉が「省エネ住宅」です。2022年現在、一般の戸建て住宅が省エネ住宅にしなければならない義務はありませんが、一定の基準を満たすとさまざまなメリットを得られるようになります。
そこで今回は、省エネ住宅の特徴を踏まえつつ、メリット・デメリットや種類をまとめました。省エネ住宅の補助金制度に関する最新情報も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1. 省エネ住宅の特徴
省エネ住宅とは、室内の快適さを保ちながら、冷暖房のエネルギー消費を抑えられる家のことです。今後の地球環境を考えれば省エネ住宅は必要不可欠であり、日本でも「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保」を目指して、義務化が進められています。
実際、2021年4月1日の「建築物省エネ法改定」では、住宅を設計するとき建築士から建築主に対して、省エネ住宅の基準を満たしているか説明する義務が定められました。
2.省エネ住宅の2つの評価基準
省エネ住宅の要件を満たしているかどうかは、国が定めた2つの評価基準によってチェックされます。
2-1.①外壁や窓などの外皮性能
外皮とは、外壁・床・屋根・窓など住宅を囲んでいる部分のことです。
外皮性能は壁や屋根の断熱性能を表す「外皮平均熱貫流率(UA)」と、「冷房機の平均日射熱取得率(ηAC)」によって評価されます。簡潔に説明すれば、室内の暖気・冷気が室外へと逃げにくいほど、また、日射による熱が室内へと入りにくいほど、外皮性能は高いということです。
省エネ住宅では、断熱材や遮光塗料を用いて外皮性能を向上させています。
2-2.②一次エネルギー消費量
一次エネルギー消費量とは、下記の5つの設備におけるエネルギー消費量の合計です。
- 冷暖房
- 換気
- 照明
- 給湯
- 家電など
この評価基準では、あらかじめ定められた「基準一次エネルギー消費量」という基準値以下となることが求められています。なお、創エネ設備(太陽光発電など)を導入している場合、上記の合計からエネルギー創出量を差し引いて算出可能です。
2-3.基準は地域区分によって異なる
日本は地形上、南北に長いことが特徴です。南北最端に位置する沖縄と北海道では、当然ながら必要な住宅性能が変わってきます。
それにともない、省エネ住宅の評価基準は全国を8区分に分けて設けられているため、それぞれ求められる基準値が異なるのです。どの地域区分に該当するのか、きちんと押さえる必要があります。
3.省エネ住宅のメリット
省エネ住宅は地球環境に優しいだけではなく、快適さや経済面でもメリットをもたらします。
3-1.夏涼しく冬暖かい快適な家が手に入る
評価基準の一つである外皮性能を高めると、断熱・日射遮蔽によってエネルギー消費量を抑えられるだけではなく、室内の快適さも向上します。冬は家中の室温がほぼ均一で結露しない家、夏はエアコンの効きが良くて朝夕は風通しが良い家になるからです。
1年を通して快適に過ごせるので、ストレスの軽減にもつながります。
3-2.エアコンなどの光熱費が抑えられる
省エネ住宅の場合、外気の影響を受けにくく、家中の室温がほぼ一定に保たれるため、エアコンやファンヒーターなどの冷暖房費用を抑えられることもメリットです。
国土交通省の資料によると、平成28年省エネ基準では一般的な戸建て住宅(120㎡・6地域)において、1戸あたり年間2.5万円の光熱費を削減できます。経済面での負担が減るので、家計にも優しい住宅といえるでしょう。
3-3.ヒートショックや熱中症を防ぐ健康住宅
家中の室温が一定に保たれる家は、快適に暮らせるだけではなく、健康面でも良い影響が見込めます。冬のお風呂場などで多発するヒートショックを予防できるほか、夏場の熱中症予防にもつながります。
特にヒートショックでの死亡者数は交通事故死者数より多く、誰にでも起こり得る事故なので、住宅性能によってこれを防げるという安心感は大きいといえます。
4.省エネ住宅のデメリット
省エネ住宅を購入するときは、メリットに加えてデメリットを把握しておくことも大切です。
4-1.設備費や住宅価格が高い
省エネ住宅の基準を満たすためには、どうしても初期費用がかかってしまいます。しかし、これは後述する省エネ住宅の補助金を使えば、ある程度まで軽減可能です。
ただし、補助金制度に認められる省エネ住宅を建てるためには、各制度の内容に詳しいハウスメーカーを見つける必要があります。
三菱地所ホームの住宅は基本性能が高水準なので、後で説明するZEH住宅(※)を推奨しています。※ZEH基準を満たす要件は諸条件によって異なります。
5.省エネ住宅の種類
ZEH基準をクリアした瀬田ホームギャラリーの外観
補助金制度を確認するにあたって、評価基準となる省エネ住宅の種類についても押さえておきましょう。
5-1.ZEH
ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称であり、ゼッチとも呼ばれています。建物・設備の省エネ性能を高めるだけではなく、太陽光発電のような創エネ設備を取り入れて、家全体のエネルギー収支をゼロ以下にする住宅のことです。
ZEH・ZEH+・ZEH+Rなど複数の基準に分かれており、それぞれ補助金の金額も変わります。基準が上がるほど多くの補助金を受け取れるので、住宅を計画中の場合はどのレベルに相当するのかハウスメーカーに事前に確認しておきましょう。
5-2.LCCM
LCCMとは「ライフ・サイクル・カーボン・マイナス」の略称です。住宅の使用時だけではなく、建設時や解体時においてもCO2排出量削減を実現した住宅を指します。
昨今、地球温暖化の対策として「低炭素住宅」の取り組みが進められていますが、その中でもLCCMは最終目標として認知されつつあります。LCCMを推進する補助金制度も設けられていますが、基準はZEHより厳しく規定されています。
6.【2022年現在】省エネ住宅の補助金制度を確認
2022年時点で利用できる省エネ住宅の補助金制度について、概要をまとめました。
制度の詳細については、担当者に確認してみましょう。
6-1.経済産業省、国土交通省、環境省の3省連携事業
住宅の省エネ化・省CO2化を推進するための取り組みとして、経済産業省・国土交通省・環境省による支援制度が導入されています。補助金の金額は条件によって異なりますが、一例として下記のように定められています。
- ZEH:定額55万円/戸
- 次世代ZEH+とZEH+:定額100万円/戸
- LCCM住宅:上限140万円/戸
- 蓄電システム:上限20万円
詳細は住宅を購入する前にハウスメーカーによく確認しておきましょう。
6-2.子育て世帯に! こどもみらい住宅支援
こどもみらい住宅支援事業は、子育て支援およびカーボンニュートラル実現のために設けられた補助金制度です。子育て世帯が省エネ住宅を建てる際、省エネ性能のレベルに応じて60〜100万円の補助金を受け取ることができます。
若者夫婦世帯(※)など幅広い世帯が補助対象となっているので、ぜひ検討してみてください。
※申請時点において夫婦であり、なおかつ2021年4月1日時点でいずれかが39歳以下
6-3.リフォーム補助金
省エネ住宅の購入・建築だけではなく、リフォームでも補助金を受け取れるケースがあります。主な補助金制度をまとめたので、下記もチェックしてみてください。
- 既存住宅における断熱リフォーム支援事業:120万円/戸
- こどもみらい住宅支援事業(リフォーム):上限60万円/戸
- 長期優良住宅化リフォーム補助金:100万円~250万円/戸
その他にもリフォーム補助金制度は多数設けられており、工事費用の大きな助けになります。リフォームを検討している場合はぜひハウスメーカーなどに確認してみましょう。
7.住宅ローンにおける優遇
省エネ性能が要件の一つである「長期優良住宅」を取得することでも、さまざまなメリットが得られるようになります。
特に住宅ローンでは、最長35年の全期間固定金利型ローンであるフラット35のほか、フラット35SにおけるAプランあるいはBプランを利用することが可能です。特に後者は金利を引き下げられるので、ローン返済の負担が軽くなります。
フラット35・フラット35Sも要件が細かく規定されているため、ハウスメーカーの担当者にきちんと確認しておきたいところです。
8.長期優良住宅による固定資産税など税制上の優遇制度
長期優良住宅を取得すれば、下記のような税金に関する優遇制度を利用することもできます。
- 所得税の特別控除(長期優良住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除:最大65万円)
- 登録免許税の税率引き下げ(保存登記:0.15%→0.1%、移転登記:0.3%→0.2%)
- 不動産取得税の課税標準の特例(1,200万円→1,300万円控除)
- 固定資産税の新築家屋の税額軽減の期間延長(3年→5年)
どの優遇制度を受けられるのか、事前にチェックしておきましょう。
9.省エネ住宅で費用を抑えて快適な住まいを
省エネ住宅は快適で健康的な暮らしを実現できる、光熱費を抑えられるといったメリットが得られる家です。もちろん、地球環境にも優しいので、環境保全に貢献できるという点も見逃せません。
各種補助金やさまざまな優遇制度に着目したうえで、費用を抑えながら理想の住まいを手に入れたいところです。
省エネ住宅の購入を検討しているなら、省エネでありながら家族に合った理想の家が建てられるフルオーダー対応の三菱地所ホームにぜひ一度ご相談ください。