はじまりは「光」の壁からだった
ガラスとガラスの間にファブリック(布)を入れ、朝昼晩、光によって空間の表情を変えるSEXYで透明感のある光の壁。それが世界初ファブリックガラスだ
GLAS LUCEは、世界に先駆けた「インテリア×IT×AI」という世界観を打ち立てて誕生した。度肝を抜くオリジナル商品の開発。その発想の根源を紐解くべく、花村氏の軌跡を伺った。「どこから話しましょうか(笑)」という前置きがあった後、こう語る。「もともとは証券会社勤務で、海外不動産を取り扱っていたんですよ。数字を扱う世界なので1+1の答えは必ず2になる。しかしある時に、その答えが無限の世界を経験してみたいと思ったんです」。そこで次のステップを探すため遊学したサンフランシスコで、今の仕事につながる大きな出逢いがあった。「友人の父の通訳で行った東京晴海の国際家具見本市でイタリアソファーメーカーと出会い「ミラノ・サローネ」に通うきっかけとなり、イタリアの家具、キッチン、建具等のインポーターとして活動しました。やがて自分たちのオリジナル商品を作ろうとなり、これまで見てきた経験やセンスをすべて盛り込む形で、世界にはまだなかった‘光の壁’を完成させたんです」。ガラスとガラスの間にファブリック(布)を入れ、朝昼晩、光によって空間の表情を変えるSEXYで透明感のある光の壁。それが世界初ファブリックガラスだ。世界トップクラスのハイセンスなイタリア家具を日本に入れたい──このプロの美意識でやってきたインポーター時代。オリジナル商品「ファブリックガラス」は、まさに自分を育ててくれた恩返しともいうべく、日本から世界に飛び立つ商品となった。
まもなく、近未来の世界をインテリアが操る
洗面化粧台など、鏡の中にコンシェルジュを人材派遣するという発想で、日常人間ドックのような役割を果たすという
たとえば。家具がしゃべったら。家具が動いたら。実はもう、そうした発想は商品化の段階まできているのだ。「(取材時点で)まもなく発売(2017年夏)となるのですが『ミラーコンシェルジュ』という商品を開発しました。鏡の中にコンシェルジュがいるという設定です」と花村氏。洗面化粧台など、鏡の中にコンシェルジュを人材派遣するという発想で、日常人間ドックのような役割を果たすという。「心拍数、血圧、体温などをクラウドに蓄積させて管理していきます。状態にあわせ緑(良い)、黄(注意)、赤(要注意)など色でも教えてくれるほか、コンシェルジュがどのようにしたらよいか、声でアドバイスを行うのが特徴。家にいながらにして日々の健康管理ができるようになるという実益性の高さから、経済産業省の新連携事業に選ばれている。「インテリアはここまで来ている」という驚きに花村氏は「たとえば座っている脇にガラス1枚あれば、そこにオリジナルの秘書を立たせる、バーチャル家族として会話するということだって可能です。また、家の玄関に入った瞬間、人物を特定しお気に入りの照明・音楽・温度・テレビ番組がつくなんてこともできます」。聞けば家で寛ぐとき、花村氏はよく映画を見るのだという。お気に入りのシーンは何度でも再生。そのイメージをたくさん蓄積し、あるヒントとマッチングさせて製品化に結びつけることもあるのだという。映画の中でしかなかった近未来の暮らしも、花村氏によって現実世界のものになっていくのだと思う。光の採り込み方をデザインした「ファブリックガラス」にはじまり、光の反応により映像が浮かび上がる「GLAS LUCE」。光を匠に演出した花村氏は、「ミラーコンシェルジュ」という形で今度は希望の光を与えてくれる。