もしあなたが家を建てるとして、まず最初に思い浮かべる空間はどこか。当然ではあるが、多くの方が家族団らんの場であるリビングを中心に家の間取りを組み立てるはず。しかし少し発想を変えてみるだけで、暮らし方はもっと豊かに変化する。ブランドのコンセプトは「バスルームは、使う空間から過ごす空間へ」。つまり、未来志向の新たな生活がはじまるということ。
スーツを仕立てるように、バスルームを仕立てるという発想
日本人はお風呂が好きな人種ですよね。それなのに、家庭のお風呂は『愉しむ』ところまではいっていない
BAINCOUTURE──これはフランス語のBAIN(バン/お風呂)と、COUTURE(クチュール/高級な仕立て)という言葉をかけあわせた造語であり、ニッコー株式会社が手がける自由設計のシステムバスのブランド名だ。このネーミングに、想いのすべてが込められていることに気づく。ブランドコンセプトは「バスルームは、使う空間から過ごす空間へ」だ。さて突然だが、貴方は温泉が好きだろうか? 日本人の多くは各地名湯を好み、自然の風景や朝夕の表情が最高のご馳走となる露天風呂をはじめ、岩風呂、檜風呂、ジェットバスなど、非日常感ある入浴形態に心の芯から癒され温まる。そして旅から帰りまた元気に日常へと還る。その点についてバンクチュール事業部 堀川千代氏はこう話す。「湯船に浸かるとは、日本古来の生活様式であり文化として現代まで伝わってきました。シャワーで簡単に済ませるという人が増えたとはいえ、旅先の温泉やスーパー銭湯が未だ人気があることが示す通り、日本人はお風呂が好きな人種ですよね。それなのに、家庭のお風呂は『愉しむ』ところまではいっていない。そのギャップを埋め、理想を叶えるのがこのBAINCOUTUREなのです」。BAINCOUTUREの東京ショールームには「そうしたかった」という理想が空間展示されている。
本当はどんなバスタイムを愉悦したいのか。理想のスタイルはきっとある
自慢の中庭に臨む場所や、夜景が最もキレイに見える場所など、本来リビングがあるであろう場所をバスルームに
たとえば海に沈みゆく夕日を眺めながら。たとえば雨粒が葉を滴り落ちる庭園の雅を眺めながら。春夏秋冬、朝昼晩、景色や気分を演出してくれるバスルームに穏やかに身を委ね、その日の出来事に思いを馳せ、人生を静観する時間に憧れはしないだろうか。家族とともに過ごすリビングでは味わえない、自分に還る至福のひととき。つまりバスルームには、何か特別な時間と気分が流れる。それに気がついた者たちは、今や“バスルームを中心に”間取りを創っていくのだという。「ひと昔前では考えられないことだとは思いますが、感度の高い方を筆頭に、バスルームを家の中の一番いい場所に設計したいという方が増えてきました。自慢の中庭に臨む場所や、夜景が最もキレイに見える場所など、本来リビングがあるであろう場所をバスルームにされています。それだけバスルームの重要性が高まってきている証拠だと感じています」とは堀川氏。もはや機能性だけを求めて利用する空間ではなく、気分や癒しを求めて活用する空間へと変化している。たしかに私たち現代人は、デジタルの進化により日々スピード性を求められる社会に生き、常に他人が発信する情報の中に身を置き、それが便利な反面少なからずストレスを感じるほどの疲弊を伴うこともあるはずだ。そうした時代背景に鑑みても、このバスタイムとは心の在り方そのものを取り戻す大切な行為なのかもしれない。だとしたら、バスルームが見直されていることも頷ける。