三菱地所ホーム
オーダーグラン

美意識の高い方こそ、オーダーメイドが相応しい

時間が許す限りとことんお客さまのこだわりを聞き、形にしていく時間の中で『履き手と作り手がひとつとなって物づくりをしている』という幸福感を強く感じました

既製品とは違い、オーダーメイドとは手間暇、そしてお金を投じてはじめて所有できるものである。それでもオーダーメイドを選ぶ人はいる。その違いは、自分のこだわりを最大限に映してほしいという“美意識”の高さだと斎藤氏は言う。「私のはじめてのお客さまは、競技スキーの選手の方でした。その競技は身体の重心移動をスキー板に伝えなければならないため、お客さまは足の感覚をとても大切にされていました。一度、海外でフルオーダーの靴を作られた体験があったようで、私のところに訪ねてきてくださった時も、ご自身の靴のこだわりについて熱心に教えてくださいました。普通は3ヶ月の期間で靴型を作るのですが、その方の場合、何度も意見をいただき、結局要した期間は4ヶ月ほど。時間が許す限りとことんお客さまのこだわりを聞き、形にしていく時間の中で『履き手と作り手がひとつとなって物づくりをしている』という幸福感を強く感じました」

もちろん完成までには“課題”もしっかりとクリアしなければならない。「お客さまは長年スポーツに励まれていたため、足の筋肉がよく発達しており足幅が広めの形状でした。その足型のまま製作すれば、足入れは良いですが見た目が美しくありません。フィット感を残したまま、見た目のフォルムをスリムにみせる必要があったのです」。そのために斎藤氏は、可能な限り靴の外側を削りこみ、フィット感とエレガントさを両立させた。実際にその靴と対面したお客さまは履き心地と斎藤氏が苦労して製作した部分の美しさを感じ取ってくれたという。履き手は「こうしたい・ああしたい」というこだわりは持っているが、靴の専門知識はない。そのこだわりを長年の技術と経験で、職人が形にすることにより、心のそこから“形”になったこだわりに満足感を得られるのだ。

履く人と共に時を刻む、一生もののビスポークシューズ

じっくり時間をかけ、一生ものを紡ぐ

3ヶ月ほどで『仮靴』といわれるものを作成します。これは本製作に入る前に、いままで受けた要望が形になっているかをフィッティングするためのものです。

オーダーメイドの場合、履き手に靴が届くまでには最短でも半年の時間を要する。「お客様さまの足の計測やヒアリングを行い、3ヶ月ほどで『仮靴』といわれるものを作成します。これは本製作に入る前に、いままで受けた要望が形になっているかをフィッティングするためのものです。もし、その時にお客さまの納得が得られない場合は、もう3ヶ月いただき仮靴を作成します。最短でも設計・仮靴・本製作に半年を要するので、どうしてもそのくらいのお時間をお客様さまにはお待ちいただく必要があるのです」と斎藤氏。 こんな印象的なエピソードがあるという。ある時お客さまからこんなひと言を言われたというのだ。「斎藤さん、見えないところにまで美しさにこだわりを持つのが職人だと思いますよ」。世の中には、大量生産されたものでも十分のクオリティを持つ製品が数多くある。しかし、靴職人であれば直接目に見えない縫い合わせの部位であろうと、一切手を抜かず丁寧に縫製する。その“こだわり”こそがプロの仕事だろうという、お客さまからの挑戦状でもある。時間がかかるからこそ、美しさを極めた作品ができ上がる。見えないところにまで魂を込めることは、いずれ足を伝わって履き手に伝わるのだ。

Toru Saito│斎藤 融
Toru Saito│斎藤 融

神奈川県厚木市出身。大学卒業後、大手化粧品メーカーに営業職として勤務。やがて靴の世界に魅了され、浅草の靴学校で靴づくりの基礎を学ぶ。卒業後、更なる技術向上と知識習得のため、日本を代表する靴職人の一人である柳町弘之氏よりShoemakerとしての必要な技能と心得を学ぶ。
2014年、自身のブランド「TORU SAITO」発表。

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